チチハル8.4事件、訴状「請求の原因」
3 訴状において原告らが2の裁判を求める理由(「請求の原因」)
日本政府が賠償の法的責任を負う理由につき訴状は概ね以下のように述べています。
① 化学兵器の遺棄という先行行為に基づく危険除去の作為義務
そもそも、本件の原因は、旧日本軍が中国に配備した毒ガス兵器であり(日本政府も認める)、これは旧日本軍が敗戦時に遺棄したものと推測されます。
日本政府は、毒ガスという非人道的な兵器を製造・遺棄し、人の生命・身体に重大な危険を生ぜしめる行為を行った(先行行為)以上、その危険を除去し被害を防止すべき作為義務を負っていたものと言わねばなりません(危険除去の作為義務)。
② 日本政府は被害の予見ができたし、結果回避措置をとることもできた
日本政府としては、中国各地で毒ガスを配備し敗戦時に遺棄を指示した以上、毒ガス被害発生の予見は可能でしたし(予見可能性)、毒ガスが遺棄された危険な地域について情報収集をし中国政府に伝える等の措置をとれば本件のような毒ガスによる悲惨な事故発生を回避することも可能でした(結果回避可能性)。
③ しかるに、日本政府は、敗戦時から戦後60年余の間も、また前記の1999年の日中の覚書以後においても、毒ガスが遺棄されている地域について情報収集をする等の努力をするどころか、却って毒ガス兵器に関する資料を焼却するなどして重要な情報を隠滅・隠蔽する行為を行い危険除去を困難にしてきたのです。
これは、前述した危険除去の作為義務に違反したものであり、日本政府が、被害救済の責任を負わねばならない理由はここにあります。
④ こうした違法行為により、原告らは、毒ガスによる、完治不可能で、進行性・遅発性の重大な身体的被害とともに、就労不能等の様々な社会的・精神的被害をも含めた全人生被害ともいうべき損害を被っており、日本政府はこれに対する責任を負わねばなりません。